マンガ買いました。というか今回に関しては「マンガ買っちまいました、とうとう」と言う感じです。
山口貴由。個人的に好きな作家です。初めて読んだのは週刊少年チャンピオンに連載された『覚悟のススメ』です。全11巻。これは自分の本棚の一軍です、死ぬまで並べておく作品です。『シグルイ』全15巻も今のところ一軍で並べてはいますが、スペースに限りがある本棚からどちらかを選んで残さなければならないとなった時には間違いなく『覚悟のススメ』を残します。余談ですがね。
山口貴由先生はとにかく個性の塊のような作家と思う。その絵柄は一言でいうと古臭い、昭和のマンガのようでもあり、劇画とも言える。異様で気色悪く感じる人もいれば、妙になまめかしく好きになれないという人もいる、ただドップリと好きになった人にはこれがたまらなくカッコイイ。個性の強い絵柄で見落としてしまうかもしれないが、キャラクターの描き分けや構図などどれをとっても抜群にうまい。劇中で、またはコマの中で何が起きているのか、読者が見失うことがない。とても上手な作家だと思ってます。
そしてその作風、これも一言でいうならとてもクドい。しつこいという意味のクドい部分もあれば、胃もたれするようなクドさとも言える。人物の心情を描く時、行動を説明する時、本人だったり創造主の視点でのモノローグを多用する傾向がある。バトル漫画、特に格闘技系の作品にこのタイプが多いのですが、山口先生の作品もこの傾向が強い気がします。ただ、このモノローグで使われる言葉のチョイス、そのセンスがズバ抜けているので、読んでいて説得力があり、読んでいてワクワクしかないのです。
さて、前置きがすこぶる長くなりましたが、今回紹介する山口先生の最新作『劇光仮面』。1巻が店頭に並んだ時から「なんかスゴいヤバそうなの描いてるな」という直感があってずっと避けていました。「手に取るな」「深入りするな」「危険」そんな予感があり、メディアでの紹介を少し読んでみても、おそらく危険だな…と。

と、わかっていたはずなのに。先日本屋に寄ったら最新4巻が平置きされていたので、ついつい出来心で手始めに1〜2巻をレジに持っていってしまいました。
主人公は29歳のアルバイター男性、実相寺二矢(ジッソウジオトヤ)。大学時代は特撮美術研究会に在籍し、特撮作品のスーツやミニチュア、特にスーツの作成を本気で取り組む彼らの現在と過去を行き来しながら進行する物語。実在の特撮作品や人物、歴史背景を巧みにそして貪欲にモチーフとしてバリバリに取り込んでいるので、正直なところ今作ばかりは誰にでもオススメします!という代物ではまったくないです。
『シグルイ』で確固たるワールドを築いた山口先生の個性が、絵柄や作風だけでなく “物語” においても大爆発した、山口貴由ワールドの新たな到達点になりそうな予感しかない。『劇光仮面』この作品にドップリとハマれるのはおそらく(別に良い意味でもなんでもない)選ばれた一握りの読者なのではないかと。

自分は1巻を読み終えた時点で、もう後には戻れない、これは…自分には…刺さる作品だ。2巻を読み始める前に覚悟完了しました。本当にこの先どう展開するのか? まったく読めない。けれども読むのをやめる選択肢もない。
あれ? だいたいいつも「皆さんぜひ」で〆るんだけど、今回ばかりは全然そんな感じじゃないぞ。(斉藤)
★劇光仮面(1・2巻)
・作者:山口貴由
・発行:小学館
・価格:750円 + 税(1巻)、727円 + 税(2巻)
