マンガとか小説とか音楽とか、ハマって一所懸命に追いかけていたけど、ついタイミングを逃して深追いしなくなっちゃうことってありますよね。
小説だと浅田次郎先生の『天切り松 闇がたり』が心底面白くて読んでいたのですが、終わったのかなぁと思ってたらいつの間にか昭和編を書かれていたり。音楽だとバンド時代のCDは全部買ってたけど、解散してソロになったら追いかけるのを諦めたり。
で、好きな作家さんだけど作品が多く、掲載=出版社をまたいでいて追いかけにくかったりで「好き」って言ってるのに網羅できない。施川ユウキ先生がまさにその一人です。(そしてなんと言っても諸星大二郎作品がSSS好きなのに網羅できませんw)
だいぶ前に『ヨルとネル』を紹介した施川先生ですが、タイトルだけは聞いていて、でも買い逃したきりになっていた作品がうれしいことに重版されました。
![](https://offtoon.xyz/wp-content/uploads/2022/04/ginganoko.jpg)
それが写真の『銀河の死なない子供たち』です。
もともとギャグマンガを主戦場にしていた施川先生ですが、いろいろな作品や本人の文章を読むとわかるとおり、かなりのSFマニアで 照れ屋で ものごとを斜に構えて捉えたがる傾向があります。なので真似して写真もストレートには撮らずに、他の作品を添えたりしてみましたが完全にスベりました。
さて、本題。『銀河の死なない子供たち』ですが、かなりディープに壮大なテーマと設定を扱った本格的なSF作品です。田中芳樹先生や高千穂遙先生が描くようなSFではなく、例えるならハヤカワSF文庫の海外作家が描くようなSFです。とっても伝わりづらいと思いますがそうなんです。
何百年か何千年か、はるか以前に人類が滅亡した後の地球で自由に過ごすパイとマッキ、そしてその母親。3人は悠久の時間の中をいっさい歳を重ねることなく、なにがあっても死ぬことなく暮らしてきました。って、オイッ。まさかのタイトル通りかよ!ってあたりがもう完全にSFだし、タイトルセンスもどことなくハヤカワSF文庫してる感じがイイですね。
パイとマッキが手懐けた動物をペットにしても、有限の命をもつペットたちは彼らより先にどうしても亡くなってしまいます。そんな中、2人の前に宇宙船が落ちてきて2人は偶然地球最後の赤ん坊を育てていくことになります。しかし、その赤ん坊はもちろん2人よりも先に大人になりやがて…。
という、まさにSF。奇想天外な舞台にユーモアとセンチメンタルを加えて、読むものに深いツメ跡を残すのは『ヨルとネル』と同様。まさにこれこそが施川ワールドといった作品です。
くどいようですが、海外SFも好き!という方には特におすすめです。読み終わると、生命と孤独、人類の好奇心といったものに思いを馳せてしまうので、自分は即座に『バーナード嬢曰く。』を読んで感情を強引に上書きしましたけどね。(斉藤)
★ 銀河の死なない子供たちへ(上・下)
・作者:施川ユウキ
・発行:KADOKAWA
・価格:上巻 570円(+税)、下巻 600円(+税)